ロイヤルシティ八幡平リゾートが広がる巖手県八幡平市松尾寄木には、「金沢清水」といわれる7カ所の湧水群があります。日本の名水百選にも選ばれているこの水は巖手山麓から湧き出ており、1日の湧水量は3.4萬トンにも及びます。ミネラル成分をたっぷり含んだ中軟水で、日本の天然水には珍しく「バナジウム」が豊富なのも大きな特徴です。
環(huán)境や作物本來の生命力を生かした「自然農」栽培の果実や野菜を使ったビールづくりを目指し、東京で発泡酒免許を取得した暁ブルワリーは、コンセプトに掲げている「人に 自然に やさしく」を実現できる拠點として八幡平に注目。ビールに欠かせない豊かな湧水に恵まれているだけでなく、近くには松川地熱発電所があり、自然エネルギーが地産地消されていることも大きなポイントでした。こうして、2020年(令和2年)9月、日本では數少ないオーガニックビール専門のブルワリー『暁ブルワリー八幡平ファクトリー』が開業(yè)しました。

八幡平のブルワリーに集まったスタッフは、ビールづくりが初めてのスタッフが多いものの、それでも、ブルワリーの創(chuàng)設に攜わったビール職人の「ビールづくりは、きれいすぎて悪いことはない」「気を使いすぎるくらいで、やっとおいしいビールができる」という言葉を守り、仕込みから一次発酵、二次発酵、熟成まで厳しく管理。窓から巖手山が見える醸造場で完成へと導きました。原料は八幡平の湧水と、有機麥芽。ホップには、ドイツ産、アメリカ産の有機ホップを使用。八幡平で完成したオーガニックビールは『ドラゴンアイ』と命名されました。ドラゴンアイとは、毎年5月中旬からのわずか2週間ほど、八幡平頂上付近の鏡沼で見られる現象。雪解けの途中で、青みがかった龍の目を思わせる神秘的な湖面を見せることからそう呼ばれています。

(寫真左上／右上)ドイツから輸入した有機麥芽。「モルト室」テイストに合わせて焙煎度合いの異なるモルトを使用する　(寫真左下)充填機や低溫殺菌裝置も完備し、八幡平で一貫生産　(寫真右下)アシスタントブルワーの中久保雅貴さんは、ビール好きが高じて入社し、東京から八幡平に転居

國産ビールで初めて、有機JAS認証を取得

4つのテイストで展開される『ドラゴンアイ』は、どれも食事に合わせやすいテイストです。例えば魚料理には、澄んだのどごしが楽しめる「スカイ／ピルスナー」を、肉料理には、苦味と香りがシャープな「マグマ／IPL」がおすすめ。軽い飲み口と柑橘系のさわやかな香りが心地よい「サン／ゴールデンエール」はサラダと一緒に、ベリーのような香りとモルトのふくよかな甘みが楽しめる「スノー／ペールエール」はデザートと合わせるなど、一度そのマリアージュを體感したら食卓に欠かせないビールになりそうです。

デビューから間もないながらも、ピルスナータイプの「ドラゴンアイ／スカイ」は、『インターナショナルビアカップ2022』で銀賞を受賞しました。また2022年(令和4年)12月には、ビールとしては日本で第1號となる有機JAS認証を取得。「有機JAS認証を取得したことで、有機農産物などを副原料に使用したビールを『有機ビール』と謳うことができるようになりました。これから、各地の農家さんとのコラボレーションも積極的に展開していきたいと考えています」と語るのは、醸造長の中林悠さん。「有機農産物などの生産者を國內に増やし、日本の農業(yè)を元気にすることも、暁ブルワリーの役割になるのかもしれませんね」と、ますます新しい可能性が広がります。

八幡平に湧き出る水を使い、仕込みや発酵、缶や瓶への充填まで、一貫して八幡平の醸造場で手がけられる暁ブルワリーのビールは、同社のオンラインショップをはじめ、オーガニック食品を扱う関東、関西、東北のスーパーマーケットで販売中。これから海外への輸出も本格化していくといい、「うちのビールをきっかけに、八幡平にも來てもらえれば」と期待が高まります。今も理想の味を試行錯誤している最中だそうですが、國産有機ホップや日本酒酵母、有機の茶など、日本らしい素材を原料としたビールも構想中とか。八幡平から、日本の食を盛り上げる新しい息吹が芽生えています。