武家屋敷が殘る奧州市水沢區(qū)。吉小路という風(fēng)情ある名前の町の一角に斎藤實(shí)記念館がある。

生誕150年（2008年取材當(dāng)時(shí)）となる斎藤實(shí)は、原敬に次いで、巖手が生んだ総理大臣である。「自力更正」を信條として諸問題の解決に力を盡くし、軍國(guó)主義に対する防波堤の役目を果たそうとしたと伝えられる。しかし、內(nèi)大臣の職にあった昭和11年（1936）、二?二六事件の兇弾に倒れた。

斎藤の舊宅は、木造瓦葺の平屋。鉄筋コンクリート２階建てで、れんが造の書庫(kù)が並ぶ。終生ふるさとを愛した斎藤が昭和７年、生家があった場(chǎng)所に建てたものだ。どちらも記念館の一部として公開されている。

舊宅の玄関脇には、庭に面した広いスペースがある。地元の人たちのために、明るい光が差し込む場(chǎng)所を自身の蔵書の閲覧室として開放したいと考えていたという。ふるさとへの想いが伝わる。

閲覧室の後ろ側(cè)には和室が３室。真ん中の10畳の部屋には、書院造の床の間が設(shè)えてある。皇族の宿泊や休憩の場(chǎng)としても使われた和室だが、襖の下のほうに四角い穴が……。飼い貓たちの通り道にと開けたものだ。偉人の微笑ましい一面を垣間見た気がした。

和室を囲むように縁側(cè)が続く。書斎と寢室だった洋間は、展示室となっている。五右衛(wèi)門風(fēng)呂とレトロな形の蛇口、細(xì)かな模様のガラス窓などは、當(dāng)時(shí)のままだ。ひとめぐりして、電燈のデザインが少しずつ異なっていることに気づく。玄関まわりや天井にも、さりげなく意匠が凝らされていた。

海軍大臣も務(wù)めた斎藤にふさわしく、書庫(kù)は軍艦をイメージして設(shè)計(jì)されたという。軍艦になぞらえ、階段は52度の傾斜となっている。1階と2階を仕切る扉は、まるでハッチのようだ。窓にはすべて防火用シャッターが設(shè)けられている。

ここに保管される蔵書や、そのほかの資料は３萬8000點(diǎn)に上る。斎藤が「勉強(qiáng)したい人のために」と集めたものだ。貴重な資料を求めて、足を運(yùn)ぶ研究者も少なくない。學(xué)ぶことを大切にした志が、今も多くの人々を支えている。

庭では、レンギョウが鮮やかな黃色の花を咲かせていた。激務(wù)が続いたであろうこの家の主人も、ときには帰省し、庭を眺めて、穏やかなときを過ごす日があっただろうか。ほころび始めた桜を見ながら、そんなことを考えた。

rakra2008年5月號(hào)掲載

2008年4月頃撮影

【蔵書】がっしりとした鉄の柱が支える書庫(kù)。手すりや扉に、軍艦のイメージがうかがえる。

【意匠】つづらのような天井、裝飾が施された電燈が時(shí)代を伝える。

【赤れんが】書庫(kù)のレンガは、今も色鮮やか。窓のシャッターが印象的だ。

【五右衛(wèi)門風(fēng)呂】白いタイルが組まれた風(fēng)呂場(chǎng)。洋風(fēng)の電燈が設(shè)置されている。