ひとりの男性が犬を連れて歩いていた。すれ違った後は誰とも出會わない。時折、トラックやライトバンが走り去る。時間が止まったような風景の中、現(xiàn)場事務(wù)所にたどり著く。人がいる。明かりがともっている。その安堵感たるや。

ここは福島県雙葉郡にある「浪江町谷津田地區(qū)メガソーラー発電所」。元は水田だった約88萬m²の土地に20萬枚のパネルが並ぶ県內(nèi)最大級の太陽光発電所だ。三菱総合研究所（以下MRI）と三菱UFJリース、地元の福島発電が出資した合同會社が事業(yè)主體となり、大和エネルギーが開発?設(shè)計?施工?維持管理までを請け負った。

福島県浪江町は2011年3月11日、東日本大震災(zāi)による原発事故で町の約8割が帰還困難區(qū)域になった。それから6年。2017年3月、一部で避難指示が解除。町が策定した浪江町復(fù)興計畫にメガソーラー発電所の建設(shè)が盛り込まれた。三菱UFJ銀行から參畫を打診されたMRIの馬場さんら事業(yè)者は「地球環(huán)境に優(yōu)しい再生可能エネルギーの拠點にすることで、地域のイメージを回復(fù)できる。メガソーラー発電所として土地を利用すれば、地域に寄與もできる」と考えた。

事業(yè)用地として浪江町谷津田地區(qū)が候補に挙がった。馬場さんたちは、住民の方々から信望の厚い區(qū)長の原田さんを訪ねた。

浪江町の中心部は生活施設(shè)が再開し、日常を取り戻そうとしていた。だが、谷津田地區(qū)は避難指示こそ解除されたものの、東西南の３方を帰還困難區(qū)域に囲まれ、北は川で區(qū)切られた陸の孤島。76世帯370名余りいた住民は、県內(nèi)を中心に全國へ散った。黃金色の稲穂が揺れる田は、荒れ地に変わり果てた。

米づくりの希望も消えかけていた。地區(qū)住民は避難先で再就職し、アンケートで「戻る」と答えた人は1割強。農(nóng)業(yè)用ダムの水は使っても安全とわかったが、汚染の心配が盡きない。

稲作が難しい土地を抱えた住民のもとに、小規(guī)模な太陽光発電をつくる話が次々と持ち込まれた。しかし、區(qū)長の原田さんは首を縦に振らなかった。「一部だけつくっても復(fù)興格差が生まれる。やるなら全部だ」。谷津田をどうやって守るか。それしか考えていなかった。メガソーラーなら皆の土地を生かせる。発電所內(nèi)の草刈りなどを地元で管理できれば、地區(qū)全般の環(huán)境整備もできる。年に數(shù)回、避難先から地元へ戻る機會があれば、故郷を忘れないだろう。原田さんは苦渋の決斷を下した。

國の認定を得るには、まず地権者の仮同意が必要になる。MRIからの資料と同意書を入れた封筒に、原田さんとご家族が一通一通、宛先を筆でしたためた。本心を知るため、「反対なら反対と書いてくれ」と手紙を添えて。

戻ってきた返事は、全て「同意」だった。どうしようもない悔しさを飲み込み、前へ進もうとする皆の気持ちがひとつに重なった。

いよいよ計畫が本格的に動き出す。設(shè)計?調(diào)達?施工を請け負うプロポーザルで大和エネルギーが選ばれた。その後、大和エネルギー社內(nèi)で最良のメンバーを招集し、経営層直轄チームを立ち上げた。プロジェクトマネージャーは足立だ。

足立は東日本大震災(zāi)後、大和ハウスグループの太陽光発電事業(yè)「DREAM Solar（ドリームソーラー）」の発起メンバーとして経験を積んできた。今や大和エネルギーの太陽光発電所は132カ所（2020年12月1日現(xiàn)在）、発電所數(shù)は國內(nèi)トップクラスの規(guī)模に。

だが、百戦錬磨の足立でさえ除染地域での事業(yè)は初めてだった。しかも設(shè)計途中で太陽光発電所から発生する電気の送電先が変更され、帰還困難區(qū)域での作業(yè)が発生した。どこが安全なのか、なにが危険なのか。社員や協(xié)力會社の方々の不安を払拭するため、事業(yè)用地はもちろん、周辺地域でも線量調(diào)査を?qū)g施し、協(xié)力會社と意見交換を行いながら設(shè)計を進めた。

「私たちの仕事は、地権者と事業(yè)者、両者の考えや想いを具現(xiàn)化すること」だと足立は考える。後方支援役として、即斷即決を自分に課した。「本當にお困りになっている方を前に『いったん、持ち帰ります』とは言えませんから」。區(qū)長の原田さんは「足立さんは現(xiàn)場に精通され、我々の話を理解した上での狀況判斷や対処が早い。車に例えたら4WDの印象です」と、荒れた路面を走破し続けた足立の奮闘を思い返す。

地元の方々から「発電所內(nèi)の除草や水路の維持管理は自分たちで」とご提案を受け、馬場さんたち事業(yè)者は「経済が循環(huán)し、復(fù)興のお役に立てるのでは」と委託を決めた。草刈りなどを自ら行うことは、地區(qū)にとっても意味があった。谷津田には農(nóng)作業(yè)などを助け合う「結(jié)返し」の風習がある。その伝統(tǒng)を守り、避難先から帰る機會をつくることで「コミュニティを後世に殘していきたい」と原田さんは願う。

維持管理の期間は、土地を賃貸借する20年間。問題は、集まる場所がないことだった。地區(qū)の集會所は閉鎖され、無人の家々は荒廃。だったら「現(xiàn)場事務(wù)所」を地権者の方々や関係者がコミュニケーションを取れる場所にして、町の明かりにすればいい。足立たちは町を歩き回り、広い建物を探した。20年間借りたいと長期契約を申し込み、土地建物オーナーの方より「浪江町のためになるなら」と承諾をいただいた。

安全祈願祭の日、現(xiàn)場事務(wù)所には離れ離れになった地権者の方々が笑顔で話す姿があった。除草を試す草刈り検討會では、かつて畔（あぜ）の草を刈っていた頃の生き生きとした姿がよみがえった。

また、今までの「DREAM Solar」で培ったノウハウを生かしながら、地権者の方々の高齢化も考え、さまざまな策を設(shè)計に落とし込んだ。ソーラーパネルの下や草刈りが困難な箇所には防草シート。太陽電池モジュールなどの最低地上高は設(shè)置環(huán)境を考慮して導(dǎo)き出した。

工事がまだ道半ばの2019年秋、令和元年東日本臺風が列島を襲った。周辺は記録的な豪雨に見舞われたが、谷津田の現(xiàn)場は最小限の被害で済んだ。被害翌日から土地が冠水した原因を探り、水の道を知る?yún)^(qū)長の原田さんと共に対策を講じた。その2週間後、再び激甚災(zāi)害の大雨に襲われるも無事に対応でき、お引き渡し後も安心していただけるという確信を得た。

2020年9月30日、「浪江町谷津田地區(qū)メガソーラー発電所」が完成。商業(yè)運転を開始し、太陽電池出力約60MW、年間予想発電量は約7,100萬kWh／年、一般家庭約14,500世帯分※の年間電力消費量に相當する発電を行う。

※1世帯當たり4,892kWh／年で算出。太陽光発電協(xié)會 表示ガイドライン（2020年度）より