
サステナブルな人 スペシャルインタビュー
蟹江憲史教授に聞く SDGsで変わる社會?環(huán)境?経済の今と未來
~慶應(yīng)義塾大學(xué)大學(xué)院政策?メディア研究科 教授 蟹江憲史さん~
2020.03.27
2015年9月に國連サミットで採択されたSDGs - Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標(biāo)-は、4年半の時(shí)を経て大きく広がりを見せています。193の國連加盟國が17の目標(biāo)と169のターゲットを共有し、2030年までにサステナブルな成長を遂げ、よりよい世界を目指す今という時(shí)代。日本の企業(yè)は、どんなことができるのでしょうか。慶應(yīng)義塾大學(xué)大學(xué)院で地球環(huán)境ガバナンスの課題を研究する蟹江憲史教授と、大和ハウス工業(yè)サステナビリティ企畫部長の近久啓太が対談しました。

蟹江憲史 さん
慶應(yīng)義塾大學(xué)大學(xué)院政策?メディア研究科 教授
政策?メディア博士
慶應(yīng)義塾大學(xué)SFC研究所 xSDGs?ラボ代表。
地球溫暖化や気候変動の問題を中心に、地球環(huán)境ガバナンスの課題を研究。編著書に「未來を変える目標(biāo) SDGsアイデアブック」(紀(jì)伊國屋書店出版)ほか多數(shù)。

近久啓太
大和ハウス工業(yè)株式會社
サステナビリティ企畫部長
SDGsの旗印のもと、社會が変化し始めている
―― SDGsの過去?現(xiàn)在?未來をどう見ていらっしゃいますか?
蟹江憲史(以下、蟹江) : 経済界がすごく盛り上がっていますよね。2017年11月に、経団連がSDGsに沿う形で企業(yè)行動憲章を改定しました。大きく舵を切ってくれたのは、非常に大きいことだと思います。
世界を俯瞰すると、2018年の終わりに歐州からのESG投資やサステナブル投資の波が日本に來始め、2019年は金融関係を中心にかなりSDGsの浸透が進(jìn)んだ感覚を持っています。民間主導(dǎo)で取り組みが始まり、2019年末には政府が「SDGs推進(jìn)の実施指針」を改定しました。これに伴って、課題ごとに解決するための省庁橫斷の枠組みをつくるという話が出てきています。今まで縦割りでなかなか突破できなかったようなことが、SDGsの旗のもとで進(jìn)み始めると、また雰囲気が変わってくるのではないでしょうか。
私がSDGsにおいて注目しているのは、これまでの省エネや効率向上などの”エコ”とは一線を畫した創(chuàng)造性です。地方創(chuàng)生におけるまちづくりもそうですし、製造業(yè)や建築業(yè)でも、SDGsの目標(biāo)12「つくる責(zé)任つかう責(zé)任」を意識したものづくりが臺頭してくるのではないかと見ています。
すでにファッションのトレンドでは、大量生産?大量消費(fèi)ではない方向性が出てきています。そういった動きが次の4、5年で大きくなり、2025年の大阪?関西萬博の頃には大きく世の中の景色が変わっているような気がしています。

近久啓太(以下、近久) :2019年は一民間企業(yè)として、ESG投資のうねりの大きさを?qū)g感した年でした。経営層がESG投資の重要性を認(rèn)識し、機(jī)関投資家の判斷基準(zhǔn)を軸に據(jù)えて、コーポレートガバナンスの基盤を固め、IRにもしっかり取り組んでチャンスに繋げていかなければという危機(jī)感を持った印象です。そこにSDGsという概念が大きく入ってきたことで、企業(yè)理念をいま一度見つめ直し、浸透させていくことでSDGsの達(dá)成に貢獻(xiàn)しなければ、という気運(yùn)が高まっています。
SDGsは、企業(yè)の存在意義と成長をつなぐためのヒントでもある
―― 大和ハウス工業(yè)の企業(yè)理念は、SDGsに合致しているということでしょうか。
近久 : 大和ハウス工業(yè)は、もともと「三方よし」の精神から始まっています。創(chuàng)業(yè)者の石橋信夫は、「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という情熱と行動力で創(chuàng)業(yè)商品をつくり、當(dāng)時(shí)の國鉄(現(xiàn)在のJR)に売り込みました。パイプハウスというプレハブ住宅のもとになった商品で、國鉄の資材置き場や宿舎などに活用されました。創(chuàng)業(yè)者は高度経済成長でインフラが整っていく社會のスピードを感じていたのだと思うのです。社會の変化に、建築を工業(yè)化するという変革を起こして対応し、成長してきたのが當(dāng)社の創(chuàng)業(yè)期です。
ですから、今この時(shí)代にあっては、一般的なきれい事ではなく、私たちのルーツをもう一度見つめ直した上で、大切にしてきた理念をSDGsと組み合わせなければならないと思っています。

蟹江 : ご指摘のように、SDGsは多くの企業(yè)で創(chuàng)業(yè)の精神や事業(yè)戦略、企業(yè)理念と一致します。SDGsを考えることが、逆にみなさんが働く企業(yè)や目の前の仕事が何のためにあるのか、存在意義を振り返る機(jī)會になります。言い換えれば、存在意義をより普遍的な、そして未來につながる言葉で語っているのがSDGsです。
また、これまでの”サステナブル”の概念とは打ち出しが異なり、経済成長を柱の一つとして強(qiáng)調(diào)しています。営利企業(yè)の企業(yè)活動と親和性が高いからこそ、広がっているのだと捉えています。
―― 大和ハウス工業(yè)は、時(shí)代の変化に合わせて変革を先導(dǎo)するという點(diǎn)で、社會性中期計(jì)畫として「エンドレスソーシャルプログラム」を、環(huán)境長期ビジョンとして「Challenge ZERO 2055」を打ち出し、「エンドレスグリーンプログラム」を策定しています。
近久 : 企業(yè)は、1年、3年先の目標(biāo)に向かって一丸となって活動していくのが得意です。営業(yè)活動をする際に、お客様?shù)谝护扦浃盲菩肖韦髽I(yè)の成長にとって重要です。ただし、長年生き殘っている企業(yè)は、社會の変化を見て自分たちに何ができるかを問うことで戦略を生み出してきたからこそ殘っている。そのことを、従業(yè)員や社會にアピールしていく機(jī)會だと思っています。
「Challenge ZERO 2055」は2055年をターゲットにしていますが、これは創(chuàng)業(yè)者が創(chuàng)業(yè)100周年で売上高10兆円の企業(yè)になるというビジョンを託してくれたからです。創(chuàng)業(yè)100周年を迎える2055年に売上高10兆円を目指すには、ただ売り上げを伸ばすのではなく、社會に大きなインパクトを與える企業(yè)になる責(zé)任を負(fù)うことは必然です。そのために、2055年に合わせてチャレンジするのだというメッセージなのです。

蟹江 : ゴールを決めることは重要ですね。特に、SDGsは世界中で目指しているわけですから、先取りすることでさまざまな機(jī)會があるし、得をすることになるはずです。また、ケネディ元大統(tǒng)領(lǐng)が月面著陸を掲げたように、実現(xiàn)困難なゴールを先に決めてしまうことは、過去の延長線上にはないイノベーションの源泉になります。ここがシナリオづくりとは異なる利點(diǎn)です。必ずしも一歩一歩進(jìn)む必要はない。例えばLEDが一斉に普及したり、開発途上國でオフグリッドの太陽光発電が広がったり。そういうことが実際に起きています。
そういう意味では、子どもたちや大學(xué)生、ベンチャー企業(yè)のほうが案外いい発想を持っていたりしますよね。実現(xiàn)不可能に思える高く遠(yuǎn)いゴールがあると、実現(xiàn)に向けた発想を「常識で考えなさい」と潰すのではなく、「どうやったらできる?」と聞く姿勢に変えるきっかけにもなります。SDGsは企業(yè)にとって、高いゴールを設(shè)定するためのヒントになるともいえます。
SDGsに取り組みたいお客様のニーズに応え、一緒に達(dá)成していく
―― SDGsを目標(biāo)においた企業(yè)活動で、注目されている事例はありますか?
蟹江 : 面白いビジネスがいろいろ出てきていますが、まだ長く続くかわからないため、確証をもって申し上げられないところです。ですが、根っこは見えてきています。
例えば、フードロスの問題は今まであまりビジネスになってきませんでしたが、最近ではオランダで賞味期限ギリギリの食品を集めて一流シェフが料理をして振る舞うレストランができたら流行り始め、店舗數(shù)が拡大しています。SDGsで世の中の景色が変わり始めている、面白いサインじゃないかと思います。
企業(yè)がSDGsに向かうとき、企業(yè)単位でなく事業(yè)単位のほうが考えやすいと思います。企業(yè)単位だと、突き出た事業(yè)があっても、まだサステナビリティへの気配りが足りない事業(yè)が併存したりすると、平均すると凡庸という狀況になりがちです。そうではなく、良い事業(yè)の絶対數(shù)を増やしていこうという話だと思うんです。そう考えたほうがやりやすいし、ポジティブだし、結(jié)果的にネガティブなことがだんだんやりにくくなっていくはずです。

近久 : われわれは、北海道から沖縄まで、建設(shè)業(yè)を軸に生産から販売までを一気通貫して自社で手がけています。全國で社員がさまざまなステークホルダーのみなさまと直接仕事をしている強(qiáng)みを生かし、全國でキャッチしたSDGsに取り組みたいお客様のニーズに応えながら、一緒に達(dá)成していくパートナーになる。そんな形を思い描いています。
蟹江 : われわれ研究機(jī)関が御社のような企業(yè)に期待したいのは、まさにそういうところです。SDGsを達(dá)成する上で一番大事なことの一つは、サプライチェーン全體で考えるっていうことだと思っています。素材がどんなもので、どう運(yùn)んでどうつくるか、一カ所だけ見るのでは、サステナブルなのかどうかわかりません。それを全體で考えられるというのは、ものすごいメリットなので、本當(dāng)にぜひ、その力を発揮していただきたいと思います。
それから、事業(yè)規(guī)模が大きいと、いいものをスケールさせる力がありますよね。実は今、自宅を建てていますが、パーツごとにSDGsに向かうものを選ぶとすごく高いんです。本當(dāng)は、サステナブルな森林経営認(rèn)証を受けた木材も大事ですが、御社がサステナブルに調(diào)達(dá)した木材がスケールメリットで安ければ、それでも良いと思いますし、価格が安ければ広がります。御社がいいものをたくさん使うことで安くしていく。その余地はたくさんあると感じます。

新しい住まい方に向けて。もういちど街を耕し、未來を耕そう
近久 : 蟹江先生がおっしゃる、サプライチェーン全體で考えられることと、スケールメリットを出せること。これに加えて、これまで手がけてきたストックの活用にもコミットしたいと考えています。
そこで、これまで開発してきた大型の郊外型戸建住宅団地が高齢化している狀態(tài)を”再耕”しようというプロジェクトを進(jìn)めています。コミュニティを今の時(shí)代や暮らす人のライフステージに合わせた形に耕し直すというものです。地域ごとの住宅地をプラットフォームに行政や大學(xué)、時(shí)にはNPOとパートナーシップを組ませていただき、つくりあげたコンセプトをもとに再耕のための施策を始めています。
蟹江 : スクラップしてしまうのではなく、うまく生かしながら新しくしていくという考え方はすごくSDGs的だと思います。推進(jìn)する研究者の立場から申し上げますと、成果を數(shù)字で表していただきたいですね。例えば、使われるエネルギー量や廃棄物の量が、再耕することでこんなに少なくなったという改善度を見える化していただくと、コスト以上の影響力が出てくると思います。
近久 : 企業(yè)理念からブレイクダウンして、先生がおっしゃるように事業(yè)単位でどういう目標(biāo)を持ち、どんなKPIを設(shè)定して進(jìn)めるかということが大切ですね。そして、それらを社員、お客様、パートナーシップを結(jié)ぶみなさまに見える化することでインパクトが生まれる。そうありたいと思います。
―― SDGsのさらに先にある、2055年のゴールを目指した更なる貢獻(xiàn)に期待しています。本日はありがとうございました。
